ドロップショットは、ピックルボールにおいて最も重要で戦略的なショットのひとつですが、うまく打つのが最も難しいショットでもあります。
正しく打てば、相手のパワーを無力化し、試合のペースを変え、ラリーの主導権を握ることができます。
相手を圧倒することを目的とするドライブとは異なり、ドロップショットは繊細さ、正確さ、コース取りが求められます。
この記事では、トップスピンとスライスという2種類のドロップショット、成功するためのメカニズム、重要なテクニック、そしてこのショットを信頼できる武器にするための戦略を解説します。
それぞれのショットの違いを理解し、使い分けのタイミングを知ることで、あなたのゲームレベルをさらに引き上げることができるでしょう。
目次
ピックルボールのドロップとは?
ドロップショットは、コートの奥深く(バウンド後)から打たれることが最も多いショットで、主にバックコート(ベースライン付近)からノンボレーゾーン(NVZ、いわゆる「キッチン」)へ移動する際の移行手段、あるいはリセットとして使われます。
狙いは、ボールをネットすれすれに越えさせて、できれば相手のキッチン内に落とすことです。うまく打てれば相手の攻撃を封じ、ラリーの主導権を取ることができます。
ピックルボールの中でもドロップは習得が難しいショットのひとつです。
配置の精度や繊細なタッチが求められるうえ、プレッシャーのかかる状況で使われることが多いため、さらに難易度が上がります。
ドロップショットはサーブリターン以降、いつでも使うことができますが、最もよく見られるのは「第3打目(サーブ側チームにとっては2回目のショット)」です。
第3打目のドロップが成功すれば、サーブ側チームはNVZに前進するチャンスを得ます。
ただし、前進には複数回のドロップが必要になることも多く、第5打目や第7打目でも使われます。
トップスピンドロップとスライスドロップの違い
ここでは、スライスドロップについて詳しく見ていきます。
スライスドロップとは?
スライスドロップは、バック回転をかけてソフトかつコントロールされたタッチで打つショットで、相手のキッチン内にそっと落とすことを狙います。
バック回転によって浮くような軌道になりやすく、バウンド後も低く滑るように進むため、相手にとって扱いづらいボールになります。
利点
バック回転をかけることでボールが低く保たれ、相手が打ちづらくなる
特に背の高い相手や、動きが鈍いプレイヤーに有効
スピードが遅いため、攻撃的スタイルの相手のリズムを崩すことができる
技術
パドル面をやや開き気味にして、ボールの下側を切るようにスウィングし、バック回転をかける
グリップはコンチネンタルグリップが理想
ボールは打球後に少し浮き上がり、自陣のNVZ上空で頂点を迎え、相手のNVZに落下する軌道を描く
バウンド後は低く滑るように跳ねて、攻撃されにくくなる
戦術的に使う場面
守備的な状況:相手の強打を無力化したいときに有効。バウンド後の低い軌道が相手の選択肢を制限し、強打を防ぎやすくなる。また、飛行時間が長いため、体勢を整える余裕が生まれるペースの変化:ラリーが高速で続いているときに、スライスドロップで一気にテンポを変えることで、相手のリズムを崩し、ミスを誘うことができる

トップスピンドロップとは?
トップスピンドロップは、中〜速めのタッチでトップスピン(順回転)をかけて打つショットで、ネットを越えた後に急激に沈み込むのが特徴です。
トップスピンを加えることで、スライスよりもやや速い速度でも安全に攻めることができ、より積極的なドロップショットが可能になります。
利点
マグヌス効果により、ボールが急激に沈むため、相手が予測・攻撃しづらくなる
トップスピンによってバウンド後に前方へ“キック”し、相手の足元を狙いやすくなる
この跳ね方により、相手は後ろに下がらざるを得ず、守備的な姿勢を強いられる
技術
グリップはコンチネンタルまたはイースタンフォアハンドが適している
パドルをボールの背後から上方向へすくい上げるようにスウィングし、ボールに前回転をかける
この“こする”ような動作によって、ボールが前方に回転しながら沈み込む
動画でのデモンストレーションもあります(※TopspinProを使用したトップスピンのかけ方)
戦術
攻撃的プレー:
トップスピンドロップは、相手にプレッシャーをかけるための攻撃的なショットとしてよく使われます。
トップスピンをかけることで速度を上げることができるため、相手の反応時間を短縮させ、バウンド後に足元へ跳ねさせることでミスを誘いやすくなります。
深さを作る:
トップスピンを加えることで、深くて安全な位置(キッチン内)に落ちるショットを打つことができます。
これは、相手を後退させつつも、攻撃されにくい状況を維持したいときに特に有効です。
トップスピンとスライスの技術的な違いについて詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください
「ピックルボールにおけるスライスとトップスピンの違いとは?」
トップスピンプロがあなたのプレーにどう役立つか
Pickleball TopspinProは、固定されたボールを使ってトップスピンやスライスの練習ができるトレーニング器具で、プレッシャーのない環境で技術を磨くことができます。
新しい技術をいきなり試合で使おうとして、結果に失望する…というのはよくあることです。スキルを単独で切り離して練習することで、正しいフォームを繰り返し体に覚えさせることができ、ボールの行方といった“結果”に気を取られることなく、必要な筋肉の記憶(筋トレーニング)を確実に作ることができます。
このデバイスは完全に折りたたみ可能で、持ち運び用バッグ付きのため、いつでも・どこでも練習が可能です。
ある程度スキルが身についてきたら、ラリーなど少しプレッシャーのかかる状況に応用し、最終的には試合での使用を目指すステップを踏むことができます。
さらに、TopspinProのパネルを取り外すことで、前方へのスイングを取り入れた練習も可能になり、さまざまなショットへの応用練習にも対応しています。
それぞれのドロップショットを使うべきタイミング
✅ スライスドロップを使うべき状況:
相手の強打を無力化したいとき
ボールを低く保ち、相手に上方向のショットを打たせたいとき
ラリーのテンポを変えて、試合の流れを乱したいとき
✅ トップスピンドロップを使うべき状況:
相手の反応時間を削って、プレッシャーをかけたいとき
より攻撃的なドロップに対応できない相手(特に弱点のある選手)を狙いたいとき
相手を後方に追いやり、ポジションを崩したいとき
まとめ
スライスドロップとトップスピンドロップは、どちらもピックルボールプレイヤーにとって欠かせない重要なショットです。それぞれのショットには異なる利点があり、状況に応じて使い分けることで大きな効果を発揮します。
両方のショットを習得することで、試合のペースをコントロールし、相手のバランスを崩し、ポイントを奪うチャンスを生み出すことができます。スライスドロップで守備的に展開する場合も、トップスピンドロップで攻撃に転じる場合も、その使いどころと打ち方を理解していることが、コート上での戦略的優位につながります。

筆者名:ゾーイ・ジェフリー
TOPSPINPRO 常任コーチ
イギリスとアメリカで17年間テニスコーチとして活動
【資格】
テニス専門のの学士号、USPTAエリートプロ、PTRプロ、LTAレベル4、PPRピクルボールプロ


