想像してみてください。緊迫した試合の最中、激しいラリーが続く中で――突然、相手が明らかに間違ったラインジャッジをしたり、ラケットを叩きつけたり、無駄な動きで試合の流れを乱したりする…。
こんな経験、ありませんか? テニスをしていれば、一度はそんなシーンに遭遇したことがあるはず。
でも、安心してください。試合の雰囲気を台無しにする必要はないんです。
テニスは、長い歴史と伝統、そして敬意を大切にするスポーツです。
12世紀のフランスにルーツを持ち、現代の世界的な競技へと発展する中で、一貫してスポーツマンシップと礼儀を重んじてきました。
それこそが、テニスならではの魅力の一つでもあります。友人との気軽なラリーでも、真剣勝負の試合でも、テニスの楽しさを守るカギとなるのが「マナー」です。
この記事では、テニスにおけるエチケットの基本を紹介します。
試合前の挨拶から、試合後の象徴的な握手まで、明文化されたルールはもちろん、暗黙のマナーについても詳しく解説。
スマートなプレーを身につけ、伝統を尊重し、コート内外でリスペクトされるプレーヤーを目指しましょう。それでは、さっそく見ていきましょう!
なぜテニスマナーが大切なのか?
テニスのエチケットは、単にルールを守ることだけではありません。
それは、相手への敬意、公平性、そしてプレーの楽しさを共有することにあります。
適切なマナーを意識することで、自分だけでなく、対戦相手や周りのプレーヤーにとっても、気持ちのいい試合を作ることができます。
誠実さとリスペクトを持ってプレーすることで、あなたのテニスの質が向上するだけでなく、このスポーツが大切にしてきたスポーツマンシップの伝統を守ることにもつながります。
これから紹介するガイドラインを実践すれば、テニスの醍醐味を存分に味わいながら、周囲からの信頼と尊敬を得ることができるはずです。
テニスは、競争の場であると同時に、人間性が問われるスポーツでもあるのです。
プレーヤーのエチケット
試合前のマナー
時間を守ろう
これは、レッスンを受けるとき、友人とラリーを楽しむとき、試合に臨むとき、どんな場面でも大切なポイントです。
遅刻すると、相手や周囲のスケジュールを乱し、不必要なストレスを生む原因になってしまいます。
試合や練習に向けてスムーズに準備するためにも、開始の15~20分前には到着するのが理想的です。
到着後にトイレを済ませたり、飲み物や軽食を準備したり、ウォームアップをして体を温めておけば、試合開始時には万全の状態で臨めるはずです。
また、試合前のルーティンを持つことで、集中力を高め、良いコンディションでプレーに入ることができます。
自己紹介をしよう
初めて対戦する相手なら、試合前に簡単な挨拶と握手を交わすのがマナーです。
たとえば、「こんにちは、〇〇です!試合楽しみですね!」といった一言を添えるだけで、良い雰囲気を作ることができます。
すでに知っている相手であっても、礼儀を忘れずに。たとえ過去に競り合ったライバル関係があっても、お互いをリスペクトする姿勢が、試合の雰囲気を良くする鍵になります。
ちょっとした心遣いが、緊張をほぐし、プレーの質を高めることにもつながります。
ウォームアップはフェアに
ウォームアップの目的は、勝負を仕掛けることではなく、お互いの調子を整えること。
強打や決め球を狙うのではなく、スムーズなラリーを意識し、相手とテンポを合わせましょう。
また、サーブやボレーの練習も相手に十分な時間を与え、コートスペースを公平に使うことが大切です。
ウォームアップの時間をうまく活用することで、試合のスタートから良いリズムで入れるようになります。
マッチプレーのエチケット
サーバーのペースに合わせる
これは公式ルールでもありますが、守られていないことがよくあります。
レシーバーは常にサーバーのペースに合わせるようにしましょう。サーバーを長く待たせないよう心掛けてください。
明確にコミュニケーションを取る
ライン判定は相手にしっかり聞こえるようにコールしましょう。
相手がアウトのコールを聞き逃していたために、後のポイントでスコアを巡るトラブルが起きることは避けたいものです。
また、サーブの際にはスコアをはっきりとコールしましょう。
万が一意見が食い違った場合も、冷静に自分の考えを伝えることで、素早く解決できることが多いです。
フェアにラインをコールする
「迷ったらアウト」と考えるのはやめましょう。
際どいボールは相手に有利に判断することがフェアプレーの精神です。誠実さは信頼やスポーツマンシップを築くだけでなく、自分の評判にもつながります。
また、ライン判定を巡る口論は避けるべきです。
ほとんどのプレイヤーは公平にプレーしていますが、人間なのでミスをすることもあります。お互いに理解を示すことで、試合をより楽しいものにできるでしょう。
素晴らしいショットを称える
相手が見事なショットを決めたら、簡単に「ナイスショット!」と言ったり、ラケットを軽く叩いたりして敬意を示しましょう。
こうしたシンプルなジェスチャーは、試合の中でもスポーツマンシップと相互のリスペクトを表します。
テニスは勝つことだけが目的ではなく、楽しむことも大切です。素晴らしいプレーを称えることで、試合の楽しさがさらに増します。
相手の邪魔をしない
サーブやラリー中に不必要な動きや音を出して、相手の集中を妨げないようにしましょう。
話し声、大声、相手がショットを打つ直前の移動などは避けるべきです。
感情をコントロールする
テニスは感情が高ぶるスポーツですが、ラケットを叩きつけたり、大声で叫んだりするのは良いマナーではありませんし、危険を伴うこともあります。
実際に、隣のコートでの怒りの爆発によって飛んできたボールやラケットに当たってしまった生徒もいました。
冷静さを保ち、そのエネルギーをプレーに活かしましょう。
周囲のスペースに気を配る
隣接するコートでプレーしている場合、周りのプレイヤーにも注意を払いましょう。
ラリーの最中に他のコートを横切るのは避け、ボールを拾うときは安全を確認してからにしてください。
また、ボールが他のコートに転がった場合、相手が踏んでしまわないよう、声をかけて知らせましょう。
携帯電話は緊急時のみ使用する
試合中は携帯電話をサイレントにするか、できればコートに持ち込まないようにしましょう。スマートウォッチも同様です。
試合中に電話を取ったり、スマホをチェックしたりするのは、相手に対して非常に失礼な行為です。
マッチプレーのエチケット
握手をする
試合が終わったらネットに向かい、相手と握手をしましょう。
結果に関係なく、「グッドマッチ!」と一言伝えるだけで、敬意を示すことができます。
相手に感謝を伝える
勝敗に関わらず、試合をしてくれた相手に感謝の気持ちを伝えましょう。
「試合ありがとう」や「楽しかったよ」といった言葉をかけると、良い印象を残せます。
後片付けをする
自分の持ち物を忘れずに持ち帰り、コートに落ちているボールを拾い、次に使うプレイヤーのためにコートをきれいにしておきましょう。
観戦マナー
試合を観戦する際も、適切なエチケットを守ることが大切です。
ポイント中は静かにする
テニス観戦で最も重要なマナーの一つは、プレー中に静かにすることです。
選手が集中できるよう、話したり、歓声を上げたり、音を立てたりしないようにしましょう。
椅子を動かす音やバッグの rustling(カサカサ音)も、試合の流れを乱すことがあるので注意が必要です。
敬意をもって拍手する
以前、私はシングルスのピックルボールの試合をしたとき、相手は家族や友人、さらには町の半分を連れてきたようでした。
その場の雰囲気に圧倒されましたが、試合が始まると驚くことが起きました。
彼らは私のプレーにも拍手を送ってくれたのです!これはとても励みになり、試合の楽しさをより一層感じられました。
応援は一方の選手だけでなく、素晴らしいプレーそのものに向けることで、試合をより楽しいものにできます。
プレー中の移動は控える
試合中の動きは、選手や他の観客の集中を妨げる可能性があります。
サイドラインで観戦している場合も、スタジアムの座席にいる場合も、ポイントが進行している間は静止していましょう。
席を移動したり、出入りしたりするのは、ポイントやゲーム、セットの合間など、試合が一時的に中断するタイミングを選んでください。
まとめ
テニスは単なるスポーツではなく、技術、敬意、スポーツマンシップが融合した競技です。
これらのマナーを守ることで、テニスの伝統を大切にし、すべてのプレイヤーや観客にとって素晴らしい体験を提供できます。
ウォームアップの尊重から、トラブル時の冷静な対応まで、エチケットはあなたの人間性を示し、試合の質を高めます。
誠実にプレーし、スポーツを楽しみ、コート内外でリスペクトを得られるプレイヤーになりましょう!

筆者名:ゾーイ・ジェフリー
TOPSPINPRO 常任コーチ
イギリスとアメリカで17年間テニスコーチとして活動
【資格】
テニス専門のの学士号、USPTAエリートプロ、PTRプロ、LTAレベル4、PPRピクルボールプロ